Part 4 「その日」の朝
 

ピッピ、ピッピ、ピッピ。朝5時、目覚ましの音で目が覚めた。はじめは寝ぼけて「なんでこんな時間に?」と思ったが、すぐ我に返り飛び起きた。カーテンを開けると雲の間から昇ったばかりのまん丸の太陽。まだ柔らかい日差しが部屋の中に差し込む。今日を照らしてくれる太陽に「今日はよろしく頼みます」と祈った。
テレビとPCの電源を入れた。台風は日本海に抜けたようである。JAノLの発着案内のページを見てみた。多少の運休はあるものの7J2に影響はないようだ。ただ関空、伊丹、セントレア便は引き返す可能性があると書かれていた。続いてMETARを見てみた。関空、セントレアの風速には見たこともない数字が並んでいる。台風はこれから関西地方に最も近づく。やはり関空に行くのは危険か、千歳に行くか、羽田の朝晩のみで我慢するか、再び葛藤が始まった。心配していた機材変更の心配は意外な出来事で消え去った。テレビのニュースで羽田の南ウィングが映った。そこに虹塗装の姿は無く新塗装の777-200が鎮座していた。これが福岡便。もう機材変更は無い。
今日をどこで撮るか葛藤しているうちにも時間はどんどん過ぎ去っていく。すでに時間は6時半を過ぎていた。もう結論を出さなければいけない時間。最初に出した結論は千歳だった。やはり今日の関空はリスクが高すぎる、羽田での最期の離陸は撮れないが千歳へ1便早い便で行けばデッキで着陸が撮れる。その後の関空への離陸と関空からの着陸も撮れる。そして虹塗装009Dのラストフライトに乗って帰ってくればいい。そう決断して千歳便の空席案内のページを開いた。009Dの千歳への出発時刻は9時。その前の便の時刻を見て愕然とした。8時発だった。今はすでに7時前。移動時間を考えるとどうあがいても間に合わなかった。そうなると残された選択肢は関空と羽田。しかし1度遠征を決断してしまった以上、おのずと答えは関空しか無い。関空に電話をして展望ホールの状況を聞いてみた。風は強いが雨は降っておらず展望ホールの閉鎖の予定はありません、滑走路は24ですとの答えだった。リスクは避けたかったが3日前のリベンジの最初で最後のチャンス、この想いが関空行きの背中を押してくれた。
電話を切った後急いで関空往復の予約を入れ、前夜用意した最大公約数の荷物を機動性の高い遠征用の構成に入れ替えた。機材構成はこうだ。
レンズ
EF300F4L EF100-400F4.5-5.6 EF70-200F4L EF135F2L EF28-70F2.8L EF50F1.4
Extender 1.4x 2x
ボディ
EOS-1D EOS-3
本当はEOS55も持って行きたかったが、荷物の関係上断念した。
準備が出来たのは7時半前だった。羽田までの所要時間1時間強。9時の出発を撮影するにはすでにギリギリの時間だった。家を出る時ふと思ったことがある。「今日はできるのならここに帰ってきたくない、帰ってきた時は別れを告げた後だから」そう思いながら玄関の扉を閉めた。

南ウィング

04年夏 新千歳

3日前の関空

 

 

写真をクリックすると拡大します

   
Part 3へ
INDEX
Part 5へ