Part 3 前夜まで
 

8月の盆休みが明けた。相変わらず9月からの鹿児島便はA300のままだ。時刻表を見るとダイヤは変更がないものの9月から機材の運用が変わるらしい。7J2も一部これまでとは違った運用になっている。「その日」はいつなのか。8/31なのか、それとも9月に入ってからなのか。ここで一つの推測を立ててみた。8月いっぱいは7J2の8979のムシキングジェットが鹿児島便に投入されている。これは夏休み企画で9月になったら元に戻るかもしれない。デカールを貼っただけなので戻すのにそれほど時間はかからないはず。剥がしついでに少し整備をしたとしても、2〜3日で終わるだろう。009Dの塗り替えはその後かもしれない。空席案内のページを調べてみると、とりあえず9/1.2は7機体制だった。
これ以降の日のスケジュールを全部調べれば、6機体制に切り替わる日がわかるかもしれない。2〜3日で7機体制に戻れば009D以外の軽整備。ずっと続けば009Dの塗装変更。手始めにその日8/27から9/22までの毎日を調べ、その結果をEXCELに入力した。結果は9/11〜9/20まで6機体制、 9/21が7機体制で翌日から6機体制に戻り、9/30からふたたび7機体制になりそれが10月末まで続いていた。「これまでの塗装変更は1ヶ月以上かかっている。そうなると塗装変更は先送りか?もしかしたら残るのか」との期待を抱いた。それ以来、空席案内のページで白赤Jの数を数えることが日課になった。しかし期待は9/1になって泡と消えた。9/4から9/9が6機体制になり9/10が7機、そして9/11から10月末まで6機体制になっていた。気を取り直して再度推測してみた。9/4〜9/9はムシキングジェットのデカール剥がしで6機体制、そうなるとそれが明けて唯一7機体制になる9/10が「その日」ということになる。この時点で9/10が「その日」と想定した。
翌9/2、いつものように空席案内のページを見ていたら「ムシキングジェット運航スケジュール」というページを見つけた。夏休みいっぱいと思っていたムシキングジェットはまだしばらく飛び続けるようで、毎日の運航スケジュールが掲載されている。7J2の運航スケジュールはすでに頭に入っているので、8979の運航の有無はすぐわかる。9/5.6.7が8979運休とだった。その頃はちょうど6機体制で、ムシキングが復帰する9/8も6機体制だった。そうなると9/7が「その日」とまず推測できる。しかし9/10も相変わらず7機体制で翌日から6機。この時点で「その日」はそのどちらかに絞られた。その頃ある方から匿名のメールが届いた。このページを見て下さっていた旧JASの方からだった。「009Dは9/8から塗装変更に入ります」といった内容だった。自分の推測とつじつまが合う。ただその時点でも9/10は相変わらず7機体制のまま。内部からの情報で信憑性は高いはず、空席案内のページもコロコロ機材が変わるので、明日になれば9/10は6機に変わるだろうとタカをくくっていた。しかし翌日も変わらなかった、次の日も変わらなかった。そうなっても9/7と信じていたが、9/10の線もいまだ捨てきれなかった。そして9/5、朝調べた時9/10は7機体制だったが、昼休みに調べたらきっちり6機体制になっていた。「その日」は9/7と100%確信した。昼休みが明けた後、上司に9/7の有休を告げた。

この頃1つ気になることがあった。南海上から接近していた台風14号。台風情報ではちょうど9/7あたりに日本列島に近づくコースを示していた。通常、台風は日本列島に近づくか上陸するとスピードが上がる傾向が高い。この台風もスピードを上げて9/7は台風一過と楽観視していたが、一向にスピードが上がらない。そして9/6に九州地方に上陸し福岡空港はその日1日ほとんど飛行機が飛ばなかった。9月のスケジュールでは7J2は1機ずつ福岡と千歳とセントレアにナイトステイする。9/5の晩は羽田に居たようなので台風には巻き込まれなかったようだが、9/6のダイヤが乱れたせいで9/7のスケジュールが変わるかもしれない、9/7の晩のナイトステイ便に入ってしまうかもしれない、そして何よりも恐れていたのが、9/7に予想もつかない運航をされることだった。同時に当日の天候も不安だった。風雨が強く撮影どころではないかもしれない。でも「その日」の撮影は何があっても譲れない。車を持っていないのでいつも撮影に行く際には電車、バス。しかし悪天候での待ち時間や移動のことを考えるとレンタカーの手配も考えなくてはいけないと考えていた。
台風が上陸した9/6、仕事の合間にもJAノLと台風情報のページをチラホラ見ていた。どうやら台風は9/7の朝に日本海に抜け、北海道に向かうらしい。しかし台風の東側は風雨がけっこう強い。そうなるとダイヤの乱れは9/7も続く可能性が高い。
9/6の009Dはどこを飛んでいたかははっきりわからないが、福岡で台風に巻き込まれてはいない。またセントレアステイとなる1515便は欠航になってしまったのでこの便に入ることもない。そうすると9/7の009Dは羽田発となると読んでいだ。
その日の空席案内のページの機種は機材変更もリアルタイムに反映していた。その時点でわかった9/7の羽田発の7J2は以下の3パターンだった。
1.羽田−福岡3往復
2.羽田−千歳−関空−千歳−羽田
3.羽田−伊丹−那覇−伊丹−羽田
1に入ってくれれば羽田で撮影できるが、2か3となると羽田での撮影機会は朝の出発と夜の到着のみ。そうなると出発を見送った後、追いかけるように遠征しかない。千歳か関空かそれとも那覇か。どこに入るのかやきもきしながら家路に着いた。
家に帰ってしばらくすると009Dが上記2に入ることがわかった。そうなると千歳か関空か。両方の天気予報を調べてみた。関空は曇り空で強い南風の予報で、昼頃に台風が鳥取沖を通過する、南風なら24だろう。関空は3日前にも行っていた。その時は06で少し悔しい思いをした。その時のリベンジが出来るかもしれないが、JAノLは9/7の関空、セントレアは引き返す可能性があることを予告している。千歳はまだ台風は遠いものの天気は下り坂、台風の状況によっては帰りの便に影響が出るかもしれない。でも天気は悪くても千歳のロケーションも捨てがたい。しかし撮影ポイントが工事中という噂もあるし、デッキも強風のため閉鎖されるかもしれない。搭乗ロビーでの撮影も構造上難しい。008Dの時後悔したくないと決めた「その日」の撮影、なのに前日になっても後悔の材料がいっぱいだった。
また、使用機材の当日変わることもたまにある。変更になって当日の朝、バタバタして家を出るのが遅れることが無いように準備を始めた。風雨の羽田での撮影を想定して大きめのビニール袋、雨ガッパ、バスタオルを用意し、バックは雨に濡れてもいいようにアルミトランクを2つ用意した。そしてレンタカーを借りるため近くの24時間営業のレンタカー屋の場所を調べておいた。レンズは残念だがサンニッパはこんな日には使えない。300mmF4をアルミトランクに収めた。羽田で撮影するならレンタカーで行くので、荷物はいくら多くなっても構わない。足りないと後悔したくないので最大公約数の機材と荷物の準備を終えた。時計の針が0時をまわり、9/7当日になった。しかし当日の自分の行動はまだ決まっていない。優柔不断なせいもあるが、とにかく後悔したくないとの思い、ギリギリまで最善の選択を模索したいとの思い、そして焦りが頭の中を駆けめぐっていた。朝5時に目覚ましをセットした。しかし眠れそうもない。ベットから抜け出し、缶ビールを2本飲んでふたたび寝床に着いた。

ムシキングジェット
Final.xls
梅雨明け後の日曜日
3日前の関空

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